四章 願い

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「……オレは、こんなに好きなのに………お前の事……」 ……そう言って、 オレは自分の顔を公平の首筋辺りに、肩の上に乗せるようにして置いた。 「……なぁ、公平…」 「……………」 「…お前の気持ちを聞かせてよ……」 ……サディストとマゾヒストは、 実は、得てして紙一重だと、 いつか何かで、誰かが言っていたのを漠然と思い出した。  いくら何でも、 自分がそこまでマニアックで極端だとは思わないけど、 “~して欲しい”って、 マゾヒストがよく言うアレ、 アレって、 すでに、サディストの“要求”の領域なんだって………あぁ、なるほどなって、今、すごく素直にオレは納得していた。 “忠誠”を誓ったハズの公平を、 オレは、でも本当は、 “支配”したいんじゃないかって………。 ………それでも、 どっちも、 “愛の形”には違いないだろ……なぁ、そうだろ? 公平………。 「………そんな風に」 …不意に、 耳のすぐ斜め上辺りから、 絞り出すような声が聞こえてきた。  「……お前には、オレだけに縛られないで生きて欲しい……」 「………え?」 オレは顔を上げて、公平の顔を見た。
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