279人が本棚に入れています
本棚に追加
………ギィ…
………誰が中にいるんだ……?
体育館の重い鉄製の扉をそぅっと押し開けて、ほんのわずかに出来た隙間から中を覗くと、
そこに、
真剣な眼差しでゴールリングを睨む仁がいた。
仁は、
ボールを構えたその手をすっと斜め前に伸ばして、
まるで、
舞い上がる、みたいなキレイなフォームでゴールにシュートした。
…………。
…本当に本当に、
ビデオのスローモーションを見ているように、仁の身体がふわりと宙に浮いているように、オレには見えて。
思わず、しばらくその姿を見ていた。…“見入る”って、多分こういう事を言うんだと思う。
今さら実感する事じゃないけど、仁は、実は運動神経がかなりいい。
普段のあの、のほほんとした姿からは想像出来ないような俊敏な動きを、オレは、同じコートの中で何度も見た。
でも、今のは、
“俊敏”っていうよりもっと、
何ていうのか…………。
「……あれ?俊哉くん!?どうしたの!?」
“誰かさん”をマネるワケじゃないけど、今の、仁のあの素晴らしい姿に当てはまる、何か上手く的確な表現を探していると………
オレの姿に気が付いた仁が、
コイツ独特のすっとんきょうな声を上げて走り寄って来た。
最初のコメントを投稿しよう!