四章 願い

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「あ…今、公平の病院から帰るとこで……それで、ボールの音が聞こえてきたもんだから……つい?」 オレが言うと、 条件反射だね、と、 仁はふふっと笑って、その後自分の手の甲で額の汗を拭った。 「それより、お前の方こそ、何で………」 別に不思議な事じゃないと言われればそうなのかもしれない。けど、オレが聞くと、  「…………精神統一?…かな」 仁が、 そう言ってまた、ふふっと笑った。 …だけど、 その笑顔はさっきと少し違って、何ていうのか、淋しげだったりもして…………。 「………何かさ、最近ちょっと、色々とあるじゃない?……それで、自分の気持ちを落ち着けたくて」 “色々” 仁はそう、 ただ大雑把に言っただけだったけど、  そのたった一言に、 公平の事とか、 廃部の事とか、  ……それから、シンとの事とかが、全部ひっくるめて入ってんじゃないか…と、オレは思った。  「…バスケットって、いいよね、何だか…“帰って来た”感じがする」 優しい口調でそう言う仁。 コイツの声って、 何かいつも、こんな感じで落ち着…………… 「……俊哉くんっ!!焼きイモ!!!焼きイモ屋が来てるよ!!!」 …………はぃ?? …仁が突然、興奮したような大声で叫んだ。  …焼きイモ?? 一体ヤツに何が起こったのか、何事なのかと、オレが確かめるより先に、 「俊哉くん、ちょっとここで待ってて!!ボク買ってくるからっ!!!」 そう言って、 猛ダッシュして体育館を出て行ってしまった。  ………何なんだ、 …今って、 割と真剣モードな話してなかったか?オレら…………。
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