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「……あぁ、うん…」
ぼそぼそと焼きイモの皮の部分に口を付けながら、
仁は、相変わらず穏やかな口調で話し始めた。
「……俊哉くん、ボクね、思うんだけど」
「…ん?」
「世の中の物事には、“知らなきゃいけない”事と、“知らなくてもいい”事と、あともう1つ、“知らない方がいい”事があると思うんだよね」
「……仁」
「…シンが何をしているのか、何を考えているのか、残念だけど、ボクには分からない事の方が多くて……でも、だからと言って、ボクはそれを自分から知ろうとは、実はあまり思わないんだ」
「…………」
「だってね、ボクが必要以上にシンの事に踏み込まない限り、シンは、学校じゃいつも通りボクに接してくれるんだから。“としぽん、としぽん”って」
「…………」
「…きっとさ、仲良くしていく為には、上手く回っていく為には、“知らない方がいい”事も、確かにあるんだと思う」
それにね、と、仁は付け加えて、オレの方を向いた。
「第一、何より、ボクはシンも正成くんも公平くんも、俊哉くんも、みんなが大好きだから………5人一緒の空間が大好きだから、ワイワイ騒いで他愛なく笑って過ごして、で、またいつか5人でバスケットが出来るって信じてるから」
だから、
俊哉くんが、ボクに何か話したい事があるならもちろん聞くけど、もし、そうじゃなければ、聞かないよ。仁はそう言うと、手の中の残りの焼きイモを、ゆっくり、噛み締めるみたいに食べた。
「………仁」
「んー?」
「………イモ、美味いな」
オレも、残りの焼きイモをゆっくり時間をかけて、味わって食べた。
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