四章 願い

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「“知らない方がいい”事、か……」 「俊哉くん…?」 「……オレにとって一番知りたい事は、本当はそうじゃなくて、本当は、お前の言う通り“知らない方がいい”事なのかもな……」 オレは焼きイモを全部食べ終わった後、ギャラリーの手摺りに背中を預けてスタンド席の一番下の段に座る仁と向かい合った。  「……よく分からないけど、俊哉くんて…」 「…………ん?」 「見かけによらず、みんなの事気に掛けてるよね?“何かあったのか、話してみろよ”って、積極的にみんなの悩みとか相談事とか、知ろうとしてる」 …………。 “見かけによらず”って何だよ………。 ……あぁ、でもそういえば、 「シンにも言われた……何でも知りたがるのは“野暮”なんだってさ………」 キャラじゃないシンの台詞に、 「本当に!?シンのヤツ、俊哉くんにそんな事言ったの!?」 意外にも仁は、 びっくりこそすれど、特にショックを受けている様子でもなかった。 ……オレなんて、あまりの変貌ぶりに、ぶっちゃけ一瞬フリーズしたっつーのに……。 「でも要するにね、俊哉くん」 仁は立ち上がると、オレと同じように手摺りに寄り掛かって言った。 「“知らない方がいい”かそうじゃないかは、相手が、知って欲しいと思っているかそうじゃないかで決まるんじゃないかと思うんだよね、ボク」 ……………。 オレは、 アイツの事を… 公平の事を、思った。 
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