四章 願い

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……ザワッ  「…え?マジで??アイツが一番って…チョー意外じゃね?」 「本当だよな、アイツいつも数学はほとんど最下位に近かったのに……」 …オレの意識が数分、 現実のそのまた向こうの別の所に飛んでいる間にいつの間にか始まっていた数学の時間で、“それ”は起こった。クラスのヤツらがザワついている声でハッと我に返る。 ……何だ? 一体何事なのかとオレが隣の席のヤツに聞くと、  「テストの結果だよ!!北村、聞いてなかったのか!?トップは、香澄!!しかも1人だけ、満点だって!!!」 ………えっ? オレは、廊下側の真ん中の席に座るアイツ…… シンの方を見た。  自分の事で、周りがこれだけ騒いでいるのにシンは、数学担当の教師から受け取った答案用紙を、席に戻って、ただじっと見ているだけだった。 「……おい、トシ!」 列を挟んで2つ斜め後ろの中尾が、オレを小声で呼ぶ。 「……イキナリどーしたワケ?アイツ…」 それをオレに聞かれても……。 むしろオレだって聞きたい。 ……それは、 アイツが急に変わった事や、 昨日の“あの”態度や言葉と、 関係があるのか、と………。
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