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やっべぇ!
遅刻だ。
時計の針が、眠りに就いたように止まっている。
ふざけんなよ順子さんっ!
新生活に向けて、新しい目覚まし時計を買ったって意気揚々としてたのに…
不良品掴まされてんじゃんっ!!
「波風くん、おはよー」
ブレザーを羽織ながら慌てて階段を降りると、呑気な順子さんが眠たそうにリビングに現れる。
「あれ?朝ごはんはぁ?」
食べてる暇はございませんっ!!
「順子さん、目覚まし時計止まってたからっ!!」
「…えぇ!?うっそぉ!昨日、電池変えといたのにぃ」
あんただったのか。犯人は…
「ほら、時計って電池入ったまま並べて置かれてるじゃん?だから、新しくしといた方がいいと思って」
ありがたいやら、余計なことやら。
とりあえず、呆れて俺は靴を履く。
「波風くん、かっこいいぃ!写メ写メ」
どこまでもマイペースで、どこまでも呑気な方だ。
「順子さん、寝なよ。昨日も遅かったんだから」
「ちゃんと見送りたいの。だって、波風くんの新しい生活の初日でしょ?」
ドアを開けると、春風が順子さんの長い黒髪を揺らした。
「…いってきます」
「いってらっしゃーい!」
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