第三章【忍び寄る影】

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「よし。その手続きは今日にでも私がすぐにしよう」 「それと…アイツには行く所なんて無いと思うんです。 だから、そう遠くには逃げていないと思います。 葉月さんを一時的にシェルターに避難されるのも、必要なのかもしれません」 「シェルター?」 「いわゆる…駆け込み寺のような物です。 ただ、それはあくまで一時的な避難場所であって、ずっとそこに居ることはできません」 「そうか…昨日、妻とも話したんだが私の赴任先に引っ越しをするのはどうだろう」 ドキッ…その話し、聡にはして無かった…。 「ちなみに…赴任先はどちらになりますか?」 聡は全く動じない。 「福岡だ。東京からそれだけ離れていれば、17歳の彼に福岡までは来れないだろう」 「純は…アイツは福岡に赴任されてることを知ってますか?」 あっ…知ってる…。 「お父さんが福岡に発つ前の日に、純も一緒にご飯を食べてるの…だから知ってる…」 「だとしたら、完全に安全とは言えません。 アイツは葉月さんのことになると豹変します。 どんなことをしてもお金をかき集めるかもしれない…。 それだけDVの依存は、加害者側の心に奥深く根付いているんです」
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