トリップ~君と空・僕の明日~

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4・屋上 屋上にて飛んだ楽譜を拾う彼方 サックスを持って現れる彼方の前には フェンスに手をかけて空を見ていた詩音 夏だというのに身体に合わないぶかぶかの上着を着ている 詩音は一度彼方を見ると視線を空に戻す ちらちらと詩音を見る彼方 詩音の長袖を不振に思う 彼方「あ、あのさ、熱くないの?」 何も言わないまま彼方をじっと見る詩音 詩音「…別に…」 詩音の左手首がチラッと見えると、 火傷の痕と、リストカットの痕 顔を逸らし、悪いことを聞いたと心の中で反省する彼方 彼方「…悪かった」 詩音「…?」 彼方「いやなんつーか、 こう俺が馬鹿だったというかなんていうか…傷つけた。 ごめん」 詩音「?何言ってるの?」 彼方「いや!なんでもない! 嫌!なんでもなくない! とにかく、そうだ、なんかあったら言えよ! 俺が何とかしてやるからさ!」 詩音の顔が少し緩む 詩音「変な人」 彼方「詩音に言われてもなー」 詩音がびっくりして彼方を見る 彼方「じょ、冗談だよ、怒ったのか?」 詩音「名前…」 彼方「俺?彼方」 詩音「…違う」 彼方「あぁ!いーじゃん別に! 詩音!お前吹奏楽やろうぜ!! そしたらさ! 嫌な事も忘れるって!」 フルートケースを握り締める詩音 秋の夕方へと変わる *
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