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5・病室
彼方が病室の扉を思いっきり開けると中には詩音が傷だらけで横たわっている
右手は包帯がぐるぐる巻かれて動かない
それでも必死に楽譜に向かってペンを進めようとしているが、ペンが落ちる。
痛々しくて見ていられない詩音の姿に絶句する彼方
詩音「あはは…変なの。
腕、どこにあるかわかんない」
涙を零しながら、狂っていく
彼方「……詩音」
詩音「こんなのただの塊なの。
そこらへんに落ちてる石ころみたい」
彼方「…詩音」
詩音「何もできない!
何も何も!!
何も!!!」
彼方「詩音!」
詩音、彼方の呼び声を消すように、
テーブルの上にあったフルートも楽譜もペンもすべてを振り落とす
詩音「何もなくなる前にやっていればよかった!!
フルートも音楽も!
空だって飛べたら!!
もう何も!!」
声を押し殺して俯く
詩音「何も…」
これでもかというほど、布団をぎゅっと握る
彼方は何も出来ず病室を飛び出してしまった
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