プロローグ

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プロローグ

あれは冷たい雨の日だった。 たしか私は3歳だったような気がする。 みんな、泣いてて、黒い服着てて… すごく怖くて隣にいるママの手を触ろうとした。<マ…マ> だけどその手は握ってはもらえなかった。 バシーンとはじかれた。怖かった、痛かった、私は大きな声で泣き出したでもママは、抱いても、なだめてもくれなかった。あの時からのような気がする。 ママは冷たい顔で私を見る。 だけど笑顔は見せてくれなくなったのは。 それから妹の渉依(あい)が生まれた。 パパの姿はない、あれはパパのお葬式だったことも大きくなってからわかった。 ママは渉依をすごく可愛がっている。 だけど…わからない、ママの冷たい目、どうしてだろう。話しもしてくれない。 渉依には、バイオリンを習わせてくれてる。 私はフルートを吹くことも禁じられてる。 渉依は音大付属の学校に通って毎日のようにレッスンがある。 私は私立の大学までの一貫校に通ってる。 お母さんには内緒で吹奏楽部でフルートを担当して毎年、全国大会だってコンクールも優勝も何回もしている。お母さんはピアニストだから、ほとんど演奏公演で家にいることはすくない。 どうして…同じ姉妹なのにどうして、そんなに私が嫌い? なぜ?お母さん そのたびに思いだす。 大きな手で愛情をいっぱいに受け止めてくれたパパを。 パパ、どうしていなくなっちゃったんだろう。 お母さんのいない日は、私も家で練習できる。 だけど持っているのは、パパが買ってくれた小さなごども用のフルート。でも新しいのは買ってもらえない。 お母さんは私がフルートを好むのが気にいらない渉依のバイオリンのレッスンの邪魔になるからって。
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