23人が本棚に入れています
本棚に追加
「…てめぇ、止まることを知らねぇのか。」
声の主―…それはグリムジョーだった。器用にもグリムジョーは片手で私の後頭部を押さえ、自分の胸に引き寄せていた。やっと状況が理解でき、あわてて離れた。
「なんでこんな雪ン中走ってんだ?お前じゃ滑り転げるだろ。」
『あ…っ、遅刻しそうだったからつい…っていうか!グリムジョーもこのままじゃ遅刻じゃん!』
「俺は平気だ。それより、鼻真っ赤だぜ?くくっ」
『な…っ!』
喉を鳴らしながら笑い、私の鼻をつまんだ。寒いからどうしても鼻が赤くなってしまう。ただでさえさっきの行為に心臓がばくばくしてるのに、こんなことされちゃ破裂してしまいそうだ。とにかく恥ずかしくて視線をそらした。
「おっと、呑気にしてる場合じゃなかったな。ま、せいぜい頑張れよ。」
そういって鼻を掴んでいた手を離し、グリムジョーは響転を使って消えてしまった。
『え!?ずるいでしょー!!』
私の声も虚しく消えた。そうか、だからあいつは遅く家を出ても平気なんだ。でも、それなら家の前あたりから響転を使えばいい。なんで歩いていたのだろう?そんなことを考えていると、足元に小さな雪だるまが置いてあることに気付いた。しゃがみこんで見てみると、雪玉が2つ繋がってるだけで顔はのっぺらぼうだった。けど、どこか可愛らしくて思わず私は笑みをこぼした。そこであることに気が付いた。この雪だるまはグリムジョーがつくったのではないのか。つくっていたらちょうどよく私にでくわして置いていった、とか。
『まさか…ね?』
そう考えるとなんだかおかしくて私は笑ってしまった。あのグリムジョーが雪だるま?たまらなく可愛く感じて遅刻とかどうでもいいと思えた。だけど、同時にすぐ会いたいとも思った。私は立ち上がり、学校までまた走りだすのだった。
-END‐
最初のコメントを投稿しよう!