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それは、突然のことだった。
「おい」
『きゃっ』
すれ違った知らない男の人にいきなり胸ぐらを掴まれた。髪は青いわ背は高いわ目付きは鋭いわと3拍子そろってる外見の所為で反抗の声も上がらない。それどころか、なんで?と考える余裕さえもなく、ただただ、心の中で助けを求めていた。すると、男の人が空いている右手を振り上げた。やられる!そう思い、私は思いっきり目をつぶった。
「……。」
あれ、痛くない。自分が予想していたのとはだいぶ違う今。おそるおそる、目を開けた。
「名札、ずれてるぞ」
『へ……?』
思わず私の口からは間抜けな声が出た。今何とおっしゃいました?聞き直したかったけど、すでに男の人の右手は私の制服の名札にあった。どうやら、ずれを直してくれたらしい。
『あ、あの…っ』
私の声と同時に胸ぐらを掴んでいた手が離れた。そして私の頭をぽんと撫で、去っていった。突然のことで頭がついていかない。怖かった。けど、触れた手がやけに優しく感じた。
-END-
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