小さな魔法使い

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「ウタカタ」  ぞくりとするほど、ねっとりとした声音に名前を呼ばれて、僕は笑った。 「何ですか、母上?」  表面上の笑顔。  その人はそんなことにも気づかない。  それがおかしかった。  春の季節。  今日は僕の誕生日だ。  10才の誕生日。  でも、この人は僕の誕生日なんて覚えてないだろう。  この人が興味があるのは、本物の僕だけ。本物であるという僕だけ。  僕の誕生日なんて意味がない。
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