中へ……

6/12
前へ
/27ページ
次へ
その部屋の向かいには部屋がない。代わりに廊下の曲がり角があって、廊下が続いている。 「あ、ここは扉があるね。」 恭子は言った。 私はそっと扉を開いた。 中は、脱衣場のないお風呂場があった。 風呂釜には蓋がしてあった。 「どうする?外して見る?」 私は恭子に言った。 しかし、恭子はこう言った。 「ねえ、直美遅くない?」 「え……?」 「それにさぁ、トイレに行くって言ったってさ。初めて来た場所だよ?どうして廊下を走って行っちゃうわけ?」 恭子がそう言ったときだった。 バンッ! 風呂釜から何かの音がした。 そして、静寂が訪れる。 「何?今の。」 美紀が青い顔で言った。 「早くお風呂場から出よう!」 私はそう言ってお風呂場を飛び出した。 恭子もそれに続く。 しかし、美紀が出てこない。 「美紀?」 私は恐怖心をおさえ、お風呂場の中を覗いた。 美紀は……居なかった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加