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よく見ると血だけではない。
先程切りつけた傷や、数秒前まで貫通していたはずの腹部まで、全てが元通りになっていた。
「…何故だ。」
困惑しながら独り言のようなか細い声で呟く。
それが聞こえたのか、また笑いだす。心底愉悦そうに、まるでピエロでも眺めているかのように彼を見ながら。
「不思議か?私を殺せないのが。ククク…当然だ。私は力を手に入れたのだから」
「ぐぅっ!?」
言葉よりも早く、数メートル離れていた距離を一瞬で詰め、彼は激しい衝撃と共に吹き飛ばされた。
「ッ!!」
立て続けに激しい衝撃が彼を襲う。扉に叩き付けられた事に気付くのは完全に床に倒れ込んだ後だった。
「ふむ。あの程度の大きさでもこれ程の威力か。やはり色塊の力は素晴らしい。」
激痛で全身が動かない。細胞1つ1つが、今動くことを拒否しているように感じた。
「しき…かい…?」
微かに動く唇を使い、絞り出すように声をあげる。
「ククク…そうだ。これが色の本来の使い方…生活資源?あんなものに色を使うなど愚の骨頂だ。」
「だから私が終わらせる。あの下に埋もれている膨大な量の色塊を使ってなっ!」
悪魔に軽々と持ち上げられ、胸に当てられる赤黒く輝く大剣。
既に抵抗する力もない。
彼は静かに目を閉じた…
「ククク…私の役に経ってもらうぞ…ヴァルグ。」
悪魔はヴァルグと呼んだ青年の胸を躊躇無く貫いた。
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