1590人が本棚に入れています
本棚に追加
・・・・・・・・・・・
私達は階段を上っていた。
「へぇー。こんなとこあったんだ」
「暇なときにでも歩き回ってみるといい・・・が、迷子にならん程度にな」
「・・・その節は、ご迷惑をお掛けしました」
ここに来てすぐに一人でお城の中を歩き回っていたら部屋に帰れず迷ってしまったことがあって、姿が見えなくなった私をライトさん達が見つけてくれたという・・・ちょっとした遭難事件があったんです・・・はい・・・
「・・・ここだ」
階段の先には扉があり、それを開けてサルファーさんが先に行った。
「あ・・・すごーい」
町の明かりが点々と眼下に見え、その明かりに負けないくらいの星が夜空にある。中庭で空を見上げるより広く近く感じた。
「上に来ただけで全然違いますね!それに、私ん家で見えるのとも全っ然違うし」
興奮している私をよそに、サルファーさんは望遠鏡の準備をしている。
「覗いてみろ」
サルファーさんに促され、望遠鏡を覗いてみた。そこには土星のような星が見えていたが、上下にわっかが2つある。
「こんな星見たことないですよ!なんていう星なんですか?」
「それは、『時の礎』と云われている」
「時の礎・・・言われてみれば時が生まれそうに見える。名前を考えた人すごいなぁ」
望遠鏡をくるくると動かしながら星を見ているユイを、私は見ていた。そういえば、星好きがもう一人いたな。私が見てるとそいつは決まって現れ、星の観測の邪魔をする。青と緑色の目を子供のように輝かせて・・・
『お?サルファーまた見てるのか?』
『なぁ、この星見ろよ!マーブル菓子みたいだぞ』
『サルファーが見つけた星ってどれだ?』
―――――――
「――・・・ァーさん。サルファーさん」
「・・・あ、ああ。どうした」
「この星見てください!マーブル菓子みたいでおいしそうですよ。今日、ローズに貰って食べたんです」
目を輝かせがら言うその表情が、記憶にある人間と重なって見えた。
「・・・以前も、誰か同じ事を言っていた」
「そうなんですか?でもこれ見た人はおいしそうって思いますよ。サルファーさんも思いません?」
「クスッ。単純だな」
「ムッ・・・どうせ単純単細胞ですよ」
「そういう意味ではない。単純明快でわかりやすいということだ」
「んー・・・それって褒めてるって事ですか?」
最初のコメントを投稿しよう!