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すると、フローラさんの後ろにある祭壇が左右に開き、大きめの剣が深々と突き刺さった状態の岩がそこに現れた。
「その剣は?」
「はい。伝説の騎士だけが扱うことのできる剣です。本物の伝説の騎士であれば容易にあの岩から剣を抜くことができます。本当にそうなのか・・・ライト。その剣を岩から抜いてごらんなさい」
ライトさんはその剣に近づいた。
「ずいぶん錆び付いているな」
剣に手を掛け、岩から引き抜こうとした。
「・・・抜けない。抜ける気配すらない」
そんなライトさんを見て、シーアス陛下が動いた。
「本当に抜けんのか?オレにもやらせろ」
そう言い、引き抜こうとするがビクとも動かない。
「・・・錆びているせいもあるのではないか?」
「それはさほど問題ありません。ユイ様、あの剣を抜いてください」
「抜いてって・・・大の男の人が抜けなかったんですよ。私、無理ですって」
「クスッ。それでは、試してみてください」
フローラさんに促され、私はその岩に近づいた。近くで見ると剣はすごく錆びている。これじゃ私の力でも折れちゃいそうだよ。そう思いながら私はその剣を握った。瞬間、その剣は光りを放ち、見る間に剣についていた錆びは落ちてスッと簡単にその岩から剣を抜くことができた。
「なんと・・・!?」
「まさか、本当に!?」
「あの娘がか・・・!?」
手にしているその剣からは、何か力のようなものが私の中に流れ込んでくるのがわかった。その力は暖かく、私の体の内側の奥深くから何かを引き上げてくるような・・・何か懐かしい気持ちを呼び起こされたような、そんな感じがした。私・・・この感覚知ってる。
この剣の飾りの青い大きめの石の光りが集中し、そこから発せられた一筋の光りが私の額に向かって伸びた。一瞬にして様々な光景が見えた。これって、魔法的なもの?光りが納まり、私は今の出来事に驚いていた。黙ったままサビが無くなって綺麗になった剣を、ただ見つめていた私の肩にそっと手が置かれた。
「・・・大丈夫ですか?」
ライトさんだ。私は顔を上げた。
「・・・これ、抜けちゃった―・・・」
心配そうに私を見ているライトさんと目が合った。
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