8人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、諸君。
突然だが、今から諸君に伝えなくてはならないことがある。
どうもわたしは、魔王というものになってしまったようだ。
こんな事になったのも、昨日あんな事があったからだ。
代名詞ばかりでは解らないだろうから、親切に回想シーンに入ろう。感謝しろイエローモンキーども。
~昨日、自宅前~
思えばあのときあの女に声をかけなければいけなかったのだ。
家のドアの前に仁王立ちしている白髪ロングのスマートなスーツ姿の女など気にしないでスルー……いや、無理だったか。
仕事から帰ってきた俺は疲れきっていた。
しかも、家の前に女が仁王立ちしている。
いつもなら別に優しくソフトに声をかけるジェントルマンな俺だが、その日はストレスが拘束具を破壊し、暴走寸前だった。
「おいコラぁ!!!人んちの前で何やってんだ!さっさとどけ白髪!!!」
女はくるりと俺の方を振り返る。
青白く不健康そうな肌だったが、整った顔立ち、赤い目。その顔に俺は何か異様なほどの魅力を感じた。
「見えるのですか」
唐突に女が口を開く。俺は負けじと言い返す。
「学生時代はよくマサイ族って言われてたがね。いいからとっととどけカス」
「ああ、見えているならいいのです」
「は?」
ゴッ。
鈍い音がした。
後頭部を殴られたようで、意識が飛びかける。
女はケイタイをとりだし、どこかに電話をしている。
「ええ、見つけました。彼には早速有明支部の『魔王』に----」
そこまで聞いて、完全に意識が飛んだ。
そして、今日。
いつの間にか自分の部屋に寝かされていた俺は、なぜか家に上がり込んできていた例の女に俺の人生を変える言葉を告げられた。
「今日からあなたの秘書を担当させていただきます、ヘルガと言います、以後お見知り置きを」
話が飲み込めない。
「どういうことかさっぱり解らねえんだけど」
「解らない?能無しが」
「え…ちょっとひどくないすか?」
女はひどく面倒そうに俺にいった。
「つまり、能なしに伝わるように言うと、あなたは今日から有明支部の魔王。そして私はその秘書を担当することになったんですよ」
「えーと…拒否権は?」
「無いですよ、腐れ脳味噌」
こうして俺は…この有明の魔王をやらされることとなってしまった…。
最初のコメントを投稿しよう!