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彼女を落ち着かせようと慌てる看護士も、病室を覗く患者たちも、瞳を失っていた。
比喩でなく現実に、眼球があるべき場所がぽっかりと穴を開け、吸い込まれてしまいそうな暗闇で埋まっている。
彼女の昂りを鎮めようと懸命に語りかける看護士の全てが彼女を追い込んだ。
看護士が優しく言葉を掛けようとすればするほど、瞳を失った顔は彼女と距離を縮め、彼女の恐怖心を煽ってしまう。
挙句、彼女は看護士を突き飛ばし、布団に潜り込んで世界を遮断した。
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