1人が本棚に入れています
本棚に追加
黒猫が歩いていた場所とは、少し離れた場所にある河川敷の建築資材置き場。
その中、木材を雨よけに一匹の犬がうずくまっていた。
雑種であろう薄汚れた犬は、雨音の中微かに足音を聞きとり耳だけをピクンと動かす。
足音は迷っているのか、重く時々立ち止まりながらも除々に資材置き場に近づいてきた。
犬はうずくまったままであるが、耳だけは足音に向けている。
足音の主は付近をキョロキョロと見渡すと、資材の下にうずくまる犬を発見する。
「……あなたも一人なの?」
あどけなさの残る声が犬に向けられた。
犬が少しだけ顔をあげると、傘も差さずに立ち尽くす少女がその瞳に映る。
お互い無言で見つめあう中、犬は少しだけ尾を動かし、水たまりをバシャっと鳴らした。
「……そっか」
そういうと、少女は寂しそうな笑顔を浮かべ、呟くように声を出した。
「……ねぇ。友達になってよ」
不思議そうに見つめながら、尻尾を動かす雑種犬。
寂しそうに笑顔を浮かべる少女。
それが彼らの出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!