『少女の尻尾』

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黒猫が歩いていた場所とは、少し離れた場所にある河川敷の建築資材置き場。 その中、木材を雨よけに一匹の犬がうずくまっていた。 雑種であろう薄汚れた犬は、雨音の中微かに足音を聞きとり耳だけをピクンと動かす。 足音は迷っているのか、重く時々立ち止まりながらも除々に資材置き場に近づいてきた。 犬はうずくまったままであるが、耳だけは足音に向けている。 足音の主は付近をキョロキョロと見渡すと、資材の下にうずくまる犬を発見する。 「……あなたも一人なの?」 あどけなさの残る声が犬に向けられた。 犬が少しだけ顔をあげると、傘も差さずに立ち尽くす少女がその瞳に映る。 お互い無言で見つめあう中、犬は少しだけ尾を動かし、水たまりをバシャっと鳴らした。 「……そっか」 そういうと、少女は寂しそうな笑顔を浮かべ、呟くように声を出した。 「……ねぇ。友達になってよ」 不思議そうに見つめながら、尻尾を動かす雑種犬。 寂しそうに笑顔を浮かべる少女。 それが彼らの出会いだった。
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