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先日までの雨続きが嘘のように、空は青く透き通っている。
蝉が忙しく鳴いている中、河川敷では一匹の犬が日を避けるように資材の影に蹲っていた。
眠そうに大きなあくびをすると、まるで別の生き物かのように耳をピクピクを動かす。
耳を向けた先から彼に聞こえてきたのは、小さな足音と息遣いであった。
「はぁはぁ……、マロ~~!!」
マロと呼ばれた一匹の犬は、不思議そうに遠くから小走りで近寄ってくる少女を見つめている。
『はは、また来たんだ。』
少女はマロの前に辿り着くと、肩で息をしながら背中の赤いランドセルをガシャガシャと鳴らす。
「……へへ、今日も来たよっ!」
そう少女が語りかけるとマロは「ワゥ」と一声し、尻尾を右に小刻みに回した。
マロの返事を聞き、少女は笑顔でマロの横に座る。
「お邪魔するね。」
舌っ足らずな言葉でそうしゃべると、少女はマロの頭をグシグシと撫でた。
『そこ、微妙に痛い……』
そう思いながらも、マロは少女の小さな手に身を任せ、気持ち良さそうにめをつぶるのだった。
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