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「ルージュ! 来ちゃダメだっ!」
自分の涙を拭った右手はもう、あの化物のように毛むくじゃらだった。
青く不気味な毛は、目視でわかるほどに段々と伸びてきた。
スーッと音をたてながら伸びる青い毛が、クリアの恐怖心を煽った。
それを視界に入れないために目をギュッと瞑る。
この姿を、妹に見られるわけにはいかない。直ぐ様クリアは妹から離れた。
ようやく会えたのに。心配で仕方なかったのに。
すぐにでも抱き締めたかったのに、クリアはまた走り出した……
「ま、待って!! 独りにしないでっ!!」
「ルージュっ!! 大丈夫だっ!! 必ず、必ず迎えに…行くか…らっ……」
途中はもう、涙で声にならなかった……
自分はもう、化物として生きていかなきゃいけない。それに妹を巻き込めない……
クリアはこの雪景色で独り、涙を流しながらルージュから離れ去っていった……
「お兄ちゃん!!────」
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