眺める

3/5
前へ
/6ページ
次へ
扉から一歩外に出ると、雨で風景が灰色に沈んでいる。 コバルト色の無機質な街の中で、色どりどりの傘がまるで本当の花のように『咲いて』いる。 美雨はその鮮やかさが、何か汚れた卑猥なもののような気がしてしまう。その色が、たとえ花にはない黒い色の傘であっても、濡れてヌラヌラしているのがグロテスクに思える。 傘は大嫌い。 トレンチコートの襟に顎までかくして雨を避けながら、美雨は行き付けのネイルサロンの扉を開いた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加