第一幕

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    麗らかな陽射し降る昼下がり、俺はのどかな空気を味わうように、木陰で腰を下ろしていた。  木の葉の合間から、羽のような日射が頬へ触れ、思わず瞼が落ちてくる。そして更に、柔らかい風が俺へ眠気を促してきた――その時。  俺の鼓膜を、体を、心を、マシンガンのような太鼓の音が震わせた。  力強く重いその音は、腹の底から響いていく。のどかさも睡魔も、まるで汗が蒸発するように、瞬く間に俺の体から焼失していった。  ……なんだ、この音は。  打楽器の音だということは分かっている。だが、それでも問い質したいほど、その重低音は今まで感じたことのない音響だった。  ――今日は中学で最後の文化祭だ。同級生はここぞとばかりに張り切っている。俺はやたらと前日の準備に張り切ってしまったため、今はへとへとに疲れ休んでいたのだが。  この音を前にして、寝てなんかいられないな……。  俺は立ち上がり、音源を探した。どこだ、どこにある。  探している間も、鼓声は俺の全身へ響き渡る。動脈が破裂しそうな勢いで働き、心臓の鼓動は痛い程体中に轟いていった。  興奮の高まりと共に、遠く離れた前方の《舞台》が見つかる。    その瞬間、俺の視界はビッグバンを起こしたかのように光り輝いた。  数十メートル離れている筈なのに、目と鼻の先に思える演奏者の存在感。太鼓の音が一つ轟く度、目の前が変貌していく。  退屈な日常が色付いて――まるでそれは、一目惚れのような、死ぬほど好きな人ができた時の衝撃に似ていた。
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