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海斗の仕事はどうなっただろう。
うまくいったかな…。
などと考えつつ一人寂しく昼食を摂ってから、旅館の周辺を散策していた時だった。
突然後ろから何か硬いものを当てられ、ビクッと肩を揺らす。
「…動かないで下さい。暴れなければ乱暴はしません、約束します。」
少し幼いような男性の声。
腰の辺りに押しつけられたそれが何かは分からなかった。
しかし、周りに人気も住宅もないこの場所でそんな風に言われて抵抗できるはずもない。
「…わ、分かったわ。」
「ありがとう…。じゃあそのまま言う通りに歩いて下さい。」
こんな物騒な脅し方をする割には丁寧で穏やかな口調。
声から察するに高校生くらいだろうか。
とりあえず今すぐどうこうされるような危険はなさそうだ。
言われた通りに歩みを進めながら、私はそんな事を考えていた。
連れて来られたのは、意外と旅館に程近い場所にある小さな倉庫。
旅館の倉庫なのか、古い布団や座布団が積まれている。
そのうちの一枚の座布団をコンクリートの床の上に敷き、彼は私にそこに座るように言った。
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