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倉庫の中は昼だというのに暗く、ジメジメとしている。
彼はやはりまだ少年という呼び方が似合う男の子だった。
特別整った顔立ちではないが優しそうな印象を受ける。
…こんな若い子が何故…?
何のために私を……。
私があれこれと理由を考えている間にも、彼はせっせと私の手首と足を縛っていく。
逃げ出す隙はあったのに出来なかったのは…膝をついている彼のすぐ横に、刃渡りの大きなナイフが置いてあったからだ。
歩いてる時腰に当てられていたのはどうやらこれらしい。
そう分かった途端冷や汗が出てきた。
「…痛くないですか?」
縛り終え、彼が聞く。
「え?…ええ、少し…。」
どういう事なんだ。
脅して連れて来た相手を心配するなんて聞いた事がない。
頭は混乱するばかりで、私は思い切って口を開いた。
「何才なの?」
「…18です。」
「高校生ね。…何故私を?」
「……」
年齢は答えてくれたものの、肝心な事については口を噤む。
「…もう少し…待って下さい。ちゃんとお話しします。もちろんあなたに危害を加えたりは絶対にしませんから。」
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