温泉旅行に誘拐はつきもの!?

8/14
前へ
/79ページ
次へ
「ふん…子供のお遊びに付き合わされるとはな。」 言いながら海斗が私と早苗を交互に見た。 じっと見つめるその視線に訴えかけるよう見つめ返す。 それに気づいているのかいないのか、海斗はすぐに俯いた。 やっぱり…分かるわけない、か…。 分かってはいたのに悲しくなってしまう。 しかし。 「くっ…私も馬鹿にされたものだ。」 嘲笑うかのように言い、海斗がゆっくりと顔を上げた。 長い腕が上がり、その指が真っ直ぐに私へと向けられる。 えっ…。 ドキッと胸が高鳴った。 「私が遊里を間違うはずがない。後ろ姿だろうが目隠しをされようが…完璧に当ててみせる。」 「海斗……」 胸がジワジワと暖かくなり、嬉しくて視界が滲む。 「驚いた…。よく分かりましたね。絶対に分からないと思ったのに…。」 優が心底驚いたように声を上げた。 「…当たり前だ。そもそも子供と遊里を並べる事自体がふざけている。…色気も何もかも違うんだからな。」 ため息混じりに言いつつ海斗が座布団の山に背中を預ける。 「…絶対、似てるのに…。バレないよな?多分この人だから分かっただけで…。」 優がぶつぶつと不安げに呟いた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5614人が本棚に入れています
本棚に追加