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「ふん…子供のお遊びに付き合わされるとはな。」
言いながら海斗が私と早苗を交互に見た。
じっと見つめるその視線に訴えかけるよう見つめ返す。
それに気づいているのかいないのか、海斗はすぐに俯いた。
やっぱり…分かるわけない、か…。
分かってはいたのに悲しくなってしまう。
しかし。
「くっ…私も馬鹿にされたものだ。」
嘲笑うかのように言い、海斗がゆっくりと顔を上げた。
長い腕が上がり、その指が真っ直ぐに私へと向けられる。
えっ…。
ドキッと胸が高鳴った。
「私が遊里を間違うはずがない。後ろ姿だろうが目隠しをされようが…完璧に当ててみせる。」
「海斗……」
胸がジワジワと暖かくなり、嬉しくて視界が滲む。
「驚いた…。よく分かりましたね。絶対に分からないと思ったのに…。」
優が心底驚いたように声を上げた。
「…当たり前だ。そもそも子供と遊里を並べる事自体がふざけている。…色気も何もかも違うんだからな。」
ため息混じりに言いつつ海斗が座布団の山に背中を預ける。
「…絶対、似てるのに…。バレないよな?多分この人だから分かっただけで…。」
優がぶつぶつと不安げに呟いた。
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