～誘拐温泉旅館～

温泉旅行に誘拐はつきもの！？

優が話したのは、何ともおかしな計画だった。

優の家庭は一般的な家庭で、対して早苗の家は代々続く華道の家元らしい。
そのせいで二人の交際は早苗の母親に猛反対されており、今までずっと別れろと言われてきた。
それでも互いを思いやり交際を続けてきたが…なかなか別れない二人に早苗の母親は強行手段に出るというのだ。

それが、早苗のお見合い。

しかし元々大人しい性格の早苗は色々反抗したものの断りきれず、そのお見合いがなんと今日、この旅館の一室で行われる。
そしてそのお見合いに、そっくりな私に代わりに出席しろと言う。

「…それは…間違ってるんじゃないかな…」
一通り聞いてから口を開くと、優が唇を噛んだ。
「わかってます…間違ってるのはわかってるんだ！だけど…早苗は優しいから今日のお見合いだって断れないで終わるに違いない。早苗のお母さんだって早苗の性格を知ってるからこんな手段に出たんだ。でも…早苗がこのまま結婚なんて…俺には耐えられません！」
「……」
その気持ちは分かるんだけど…。
でもそれはやっぱり間違っている気がする。