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「…もういい。やっぱり話し合いじゃ無理なんだ。誰も俺達の想いをわかってくれない…。」
吐き捨てるように言い、優がこちらへ向き直る。
…誰も俺達の想いをわかってくれない?
それは優達も同じではないのか。
今自分達が私や海斗にしている事はなんなのだ。
自分達の事しか考えていない行動が、どれだけの人に迷惑をかけるのか。
「…考えがなさすぎる。」
私の考えていた事が海斗の呟いた言葉と重なり、そっと海斗を見つめた。
優はその海斗の首にナイフを向け私を見下ろす。
「…遊里さん、見合いに出て下さい。そしてハッキリキッパリと断ってきて下さい。…嫌だと言ったり、計画の邪魔をすれば…あなたの旦那さんを傷つけますよ。」
「…優君…あなた…」
そんな事をして早苗は喜ぶのだろうか。
こんな事までして二人の仲を繋ぎ止めて…二人は本当に幸せになれるのだろうか。
唇が震える。
優の瞳が本気を物語っていて、なんとも言えない悲しさが胸に溢れた。
間違ってる。
自分の幸せを守る為に誰かを巻き込んで…。
優しい青年だったはずの彼が今ではその面影を残していない。
私はどうしたら良い?
優と早苗に間違いを教えるために、私に何が出来るの?
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