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「…遊里さん、返事を。」
「…」
急かされ、ふっとため息をつく。
今の彼らに何かを言っても素直に聞いてくれるとは思えなかった。
海斗を人質にとられたようなこの状況では説得をするような余裕もない。
「…わかったわ、お見合いには代わりに出ます。」
「良かった!あなたならきっとわかってくれると思ってました!」
私が答えた途端に優の目が輝きに満ちた。
「早苗、良かったな!これで大丈夫だ。俺達一緒に居られるよ!」
「…優ちゃん…うん。」
優に同意を求められたのに、早苗の表情は固い。
小さく笑うとまた俯いてしまった。
早苗はこんな事をしたくはなかったのかもしれない。
…だけど優と一緒に居たかったから、優の作戦に乗るしかなかったのだろう。
「見合いの時間までまだ少しあるんでしばらくじっとしていて下さい。」
そう言い、優が海斗の前に腰を下ろす。
その横に早苗が座り、私は正面から海斗に近づいた。
「海斗…ごめんなさい…私が捕まったから…。」
震える声で言うと海斗が困ったように笑う。
「お前のせいじゃない。…遊里、大丈夫か?怪我は…?」
「…ううん。大丈夫。」
こんな時まで私を心配する海斗に、視界が滲んだ。
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