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自己紹介で嫌な緊張は解けたのか、その後の雑談では何とか疑われるような言動もせずに済んだ。
普通に話してしまうと年齢を疑われても困るので、なるべく幼い言葉使いをしなければならないのが大変だったけれど…。
そして雑談も盛り上がってきた頃。
仲介役の方がそっと口を挟んできた。
「ではお互いの事も分かってきたようですし、後はお若い二人で…」
出た。
定番のセリフだ。
本当にこんな事いうんだ…。
妙に感動していると、双方の両親が立ち上がる。
いそいそと部屋を出ていく両親を目で追いながら、忘れかけていた緊張と罪悪感が蘇ってくるのを感じた。
ここからが本題なのだ。
米沢さんにこの縁談をなかった事にしてもらえるよう、うまい事断らなければならない。
しかし状況は最悪だった。
米沢さんの視線からは私に好意を持っている事がひしひしと感じられるのだ。
……でも断らないと海斗が…。
「早苗さんは…」
「あ、は、はい!」
急に話しかけられて体が強張る。
そんな私に、米沢さんは穏やかに微笑んだ。
「そんなに緊張しないで。早苗さんは本当に可愛いですね。」
「いえ、そんな事は…」
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