5612人が本棚に入れています
本棚に追加
可愛いなどとこの年で言われ、激しく恥ずかしい。
思わず俯くと、米沢さんはそんな私に他愛もない世間話を振ってくれた。
変な緊張をほぐそうとしてくれている。
それがさり気なく伝わってきて、心がズキズキと痛んだ。
…私はこの人を騙している。
そして今からこの人を傷つけなくてはならない。
そう考えただけで辛くて仕方なかった。
微笑んで会話への返事を口にしながら、どのタイミングで言えば良いのかを模索する。
「…ですから、早苗さんとは良いお付き合いをしていきたいんです。もちろん、結婚を大前提に。」
え…?
まずい。
考え事をしていたせいで、全く話しがつかめない。
何が『ですから』なの?
結婚を大前提って…これってとてもまずいんじゃ…。
変な汗が背中を伝った。
こんなような事を言われる前に断るのが当たり前だよね。
今から断ったら失礼にも程がある。
どうしよう。
どうしよう。
私のバカ!!!
激しい焦りが顔にでていたらしい。
米沢さんの視線を嫌なくらい強く感じる。
い…言うしかない。
タイミングを間違えてしまったけど、今言わなければ海斗が…!
最初のコメントを投稿しよう!