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「…どちらが子供か分からないな。」
車中、クスクスと笑いつつ海斗が呟く。
「だって…なんか寂しくて。」
唇を尖らせると、海斗の大きな手が私の頭を撫でた。
「…3泊4日なんてあっという間だ。久しぶりの夫婦水入らずなんだから、楽しく過ごすのが一番だろう?」
優しい声に、頬が熱くなる。
コクコクと頷き、照れくささを誤魔化すようにパンフレットを広げた。
「わ…私ね、ここ行きたいんだ。」
「…美術館か。」
チラッとパンフレットに目をやり海斗が目を丸くする。
まぁ私が美術館に行きたいなんて言ったのが初めてだから仕方ない反応ではあるのだが…。
「あのね、イルカの絵で有名な人の絵画展をやってるの。私あのイルカの絵がすごく好きで!でも絵画展が明日までだから、着いたら行こうよ。」
イルカの絵で有名な、あの外国の画家さん。
絵には全く興味のない私でも、あの人の書くイルカには目を奪われた。
今回宿泊する温泉旅館の近くの美術館でたまたまその人の絵が飾られるというのだから、見に行かないという選択肢などないではないか!
力説する私に微笑み、海斗は大きく頷いてくれる。
「ほんと!?やったあ!!」
車中で飛び上がる勢いで喜び、旅館までの道のりはワクワクとドキドキで落ち着かなかった。
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