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ピク。
目を瞑ってじっとしていた海斗の体が揺れる。
それに気づいた早苗が、首を傾げた。
その海斗の目が一瞬にして見開かれ、眉間に皺が寄っていく。
「…おい。優。」
「…え?」
低い声が優を呼び、優が海斗を振り返った。
海斗は優の方を見ずに言葉を続ける。
「縄をほどけ。」
「な…何言って…まだ見合いは終わってないんですよ?」
「良いからほどくんだ!!」
怒鳴り声が倉庫に響き早苗が体をビクつかせた。
「な…なんだよ。逃げ出そうったってそうは…」
「あの…海斗さん、何かあったんですか?」
迫力にビビる優の言葉を遮り、早苗が震える声で問う。
海斗は辛そうに顔を歪めて拳を握った。
「…遊里が呼んでいる。」
「…は?そんなわけ…」
「遊里が呼んでいるんだ!泣いてる!良いから早く縄をほどけ!!!」
それを聞き、今にも暴れ出しそうな海斗から少し距離を置きつつ、優が上擦った声で怒鳴る。
「ほ…ほどけるわけないだろ!逃げたいからって適当な事言うな!!!」
「優ちゃん!」
海斗は唇を噛み締めて怒りのこもった視線を優に送った。
「…だったら覚悟は出来てるんだろうな?」
「え?」
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