5610人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
「もし遊里に何かあってみろ。お前も早苗にも…それ以上の罰を与えてやる。」
その鋭い瞳に、優と早苗の背筋に冷や汗が伝う。
視線を正面に戻した海斗は、手や足を無茶苦茶にねじり出した。
「ちょ…おい、何やってるんだよ!」
優の声にも反応せず、ただただ縄を外そうと無理やりに体をよじる。
次第に擦れた手首や足首から血が滲み出てきて、早苗が目を反らした。
「おい!血が出てるだろ!やめろよ…やめてくれよ!!」
「うるさい黙れ!!…愛する人が自分を必死に呼んでる時に側に居てやれないなら…俺にとってそれは愛ではない!!!」
「っ…」
海斗の剣幕に優が一歩後退る。
ガタガタと椅子が揺れ、椅子の足を血が伝っていた。
早苗は必死に涙をこらえながら、目を閉じる。
これで良いのかと何度も自分に問いかけた。
海斗さんや遊里さんを巻き込み傷つけて、これが私の求めていた幸せなのかと。
違う。
こんなのは違う。
私はこんな風に誰かを傷つけてまで幸せになりたかったわけではない。
そう思った瞬間、早苗は目を開いて歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!