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「っ早苗!?」
早苗は海斗の前まで行き、海斗の顔を見下ろす。
そのあまりのかっこ良さに動揺しつつも、手に持っていた小振りのナイフを握り直した。
真っ直ぐに見据えてくる強い瞳を見てから、ふっと笑う。
「…今すぐ、外します。」
そう言って次々とナイフで縄を切った。
「早苗!計画が…!」
それを止めようとする優に、早苗が涙をこらえ呟く。
「…こんな事して、本当に幸せになれるの?…ねぇ、優ちゃん…」
「…早苗…。」
優はそれっきり俯いたまま微動だにしなくった。
全ての縄を外された海斗は素早く立ち上がり出口へと走る。
海斗が飛び出して行った出口を見つめ、早苗の頬に涙が伝った。
「…行こう優ちゃん。」
右手を差し出し、優の前にかざす。
「私達がケジメをつけなきゃ…一生、幸せになんかなれないよ…。」
「…ああ、そうだな…。」
顔を上げた優の瞳にも涙が浮かんでいた。
しかし小さく微笑んで早苗の手を握る。
「行くぞ!」
「うん!」
勢いよく走り出し、二人は一直線に見合いが行われている部屋へと向かった。
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