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「…………」
一通り説明が済むと、部屋の中には重苦しい沈黙だけが漂っていた。
意識を取り戻した米沢さんも座布団の上に正座に顔を俯けている。
話しの流れで海斗が誰なのか分かったのか、醜い言い訳すらしなかった。
米沢さんの両親はすすり泣き、早苗の母親は眉間に皺を寄せて目をつぶっている。
海斗は座って私の腰を抱き、守るように全員を睨みつけていた。
最初にその沈黙を破ったのは早苗の母親だった。
「……人様を誘拐して身代わりにするなんて…。」
怒りのこもった声が震えている。
「挙げ句…お宅の息子さんは暴力にレイプ…?」
母親の言葉に米沢さんの両親が声にならない声を上げ土下座をした。
「なんなのよこれは!!」
バンッ!とテーブルを叩いたその音に体がビクつく。
それをしっかりと宥め、ようやく海斗が口を開いた。
「…何か、忘れていませんか?」
「……え?」
なんの事かわかっていない母親に。
海斗が私をチラッと見る。
「まずは何よりも…私の妻に…遊里に謝罪するのが当然でしょう!」
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