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「彼は…こないだ高校の先生を殴って退学になってるんです。」
「え…?」
そんな事優は言ってなかった。
慌てて優の方を見ると、彼は気まずそうに目を伏せる。
「…今時高校中退だなんて、良い会社に入れるわけもない。結婚したら早苗が苦労するのは目に見えているでしょう?子供にわざわざ苦労すると分かってる道を歩ませるわけにはいきません。」
かなりの偏見が混ざっているが、言いたい事はなんとなく分かる気がした。
つまりは…娘の安定した未来を守りたかったのだろう。
私達が黙っていると、いきなり早苗が立ち上がった。
その瞳いっぱいに涙がたまっている。
「だからっ…説明したじゃない!優ちゃんが先生を殴ったのは、先生が私に…変な事をしようとしたからだって!優ちゃんは私を守ってくれたんだって!!なのにっ…なのに何で!?」
泣き叫ぶ彼女の声に海斗が深くため息をついた。
「…苦労をするのは目に見えている、ですか…。」
「え?」
「苦労の何が悪いんでしょう?18にもなっているんです。2人だってそのくらいの事…分かっているのではないですか?」
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