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そう言って優の方に視線を移すと、その想いに答えるように優が力強く頷いた。
父親は嬉しそうに笑い母親を抱きしめる。
「早苗が選んだ道なら、応援してやろうじゃないか。…美しいだけじゃなく優しい君なら、もう分かっているだろう?」
「…バカね、もう…」
頬を染め笑い、母親がその広い肩を抱きしめ返した。
その姿に胸が熱くなる。
うらやましいようななんとも言えない感情がせり上がってきた。
不意に海斗が私を抱きしめる腕に力が入り、そっとその顔を見上げた。
目が合った瞬間に温かい笑みを浮かべ海斗が耳元で囁く。
「…愛してる。」
その熱い吐息に耳から熱くなっていった。
……やだわ私。
うらやましいなんて…こんなに愛されているのにね。
人はどんどん欲張りになっていくから。
だから私も…海斗と過ごす旅行に執着してしまった。
大事な事は、海斗が何度も謝り、事実こんなに早く帰ってきてくれたと言う事なのに。
誰かに強く愛されてる。
それだけで…幸せな事なのにね。
「海斗…ごめんね。お帰りなさい。」
海斗の首に抱きつき、心から言葉を囁いた。
それには答えなかったけれど、海斗の温かい手が全てを許してくれた気がした。
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