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「おい、お前達。」
話し合いも無事終わり。
いざ病院へと歩き出したその時、急に海斗が優達を呼び止めた。
「は…、はい!」
何故だか背筋を伸ばし返事をする優に近づくと、海斗は拳で優の肩を軽く小突いた。
「…結婚を考えているなら、必ず早苗の両親を納得させるような男になれ。高給じゃなくて良い。立派な役職じゃなくて良い。ただ…胸を張って仕事を出来る男になるんだ。」
海斗の強い言葉に、優の目つきが変わる。
…ああ、ちゃんと男の目をしてる。
18才の男の子が見せる男の一面に、少しだけドキッとした。
「はい!」
「良い返事だ。…だが仕事にだけかまけるのはやめなさい。妻や家族を心から愛してこその仕事だからな。家を守ってくれる誰かがいるから…自分を信じていてくれる人がいるから頑張れるんだという事を忘れるなよ。」
そう言いながら海斗が私の方を見る。
その瞳はどこまでも優しく、私は少しだけ照れくさくて俯いた。
「早苗は顔だけじゃなく性格も遊里に似ていそうだからな…あまり放っておくとすぐにヘソを曲げるぞ。」
からかい半分のその言葉にますます顔が上げられなくなる。
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