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旅館に着くと、もう9時を回っていた。
さすがに夕食は難しいかな…などと思っていたら、中居さんがしっかり待ってくれて居て夕食にありつけた。
「あ~お腹いっぱい!!」
「…随分食べてたからな。」
若干引き気味に言う海斗に、頬が熱くなる。
「だって…色々あったしお腹空いてたんだもん…。」
蚊の鳴くような声で反論したら、海斗がクスッと笑った。
「…まぁ良い。それだけ食べられれば大丈夫だろう。」
そう言い、長い腕を私へと伸ばす。
その指先が私の頬をなぞり、労るようにガーゼに触れた。
「…頬、痛むか?」
「…少しね。」
「今日はお風呂は禁止だと言われたんだろう?」
「……そうなの。せっかく温泉旅館なのに!」
残念でたまらなくて、小さくため息をつく。
露天風呂に今夜も入りたかった。
……ただでさえ米沢さんにあちこち触られたし…。
私の気持ちを察したのか、海斗が困ったように笑う。
「仕方ないさ。頭を打ってるんだ、医者の言う通りにしろ。…疲れただろう?もう休むぞ。」
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