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そう思ったら海斗にくっついているのすら申し訳なく思えてきて、そっと体をずらした。
海斗に背中を向けるようにし、瞳を閉じる。
閉じた瞼の間から雫がこぼれ目尻を伝った。
今日は海斗に抱いて欲しかったな…。
でも…無神経な願いだよね…。
声を殺し涙を流すものの、体が微妙に震えてしまう。
海斗が気づきませんように。
今気づかれたら、なんだか惨めだから…。
「…何故泣くんだ。」
ビクッ!!
急に静かな部屋に低い声が響き体がビクついた。
そして後ろから抱きすくめられる。
「な…泣いてないよ?」
「じゃあこっちを向きなさい。」
「……」
向けるはずがない。
黙ったままでいると、海斗が耳元に口をすり寄せてきた。
「…腕が冷たいんだ。」
「え…あっ!」
その言葉に頭を上げると、頭を乗せていた部分が私の涙で濡れている。
「これは欠伸で…ごめんなさい、今拭くからっ…」
慌てて布団から出ようとしたのに、海斗は私を抱きしめたまま離してくれなかった。
「何故離れた。何故背中を向けるんだ。……何故声を殺して泣く…。」
囁かれる声が脳を熱く震わせる。
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