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「…なんで旅行に行ってそんな怪我してんの?」
我が家に帰って来ての斗真の第一声がこれだ。
夫婦揃って固まってしまい、誤魔化すようにひきつった笑みを返す。
「…転んじゃった。た、ただいま~!」
わざと明るい声で言うと今度は遊真がこめかみの包帯に触れて来た。
「…どうしたの?母さん…痛い?」
心底心配そうなその顔に、胸がキュンと鳴る。
「…大丈夫よ。あんまり痛くはないから。」
そう言って自然に微笑んだら、遊真がホッとしたみたく苦笑した。
「里海もママなでなでする~!」
私の腰に抱きついている里海を抱き上げ、そっと頬にキスをする。
「ただいま。お兄ちゃん達の言う事聞いて良い子にしてた?」
「うん!お兄ちゃんと一緒に寝たんだよ!」
楽しそうに三人で過ごした日々を語る里海の話しを聞きながら。
おそらく里海が寝てから怪我の事で息子達に質問責めに合うであろう夜の事を考えていた。
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