2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
彼女は、雨に濡れていた。 空一面を覆った暗灰色の乱層雲から零れ出した雨滴は、ライトブルーの髪から頬へと伝う。 一方でそれはやや短めの髪から雫となって、やがて服が濡れるまでに多くの時間を必要とはしなかった。 どこへともなくぼんやりと視線を送るだけで身じろぎもせず、辺りは野草を弾く雨音だけが小さく聞こえるのみ。 彼女は、雨に濡れていた。 ―その傍らには、傘があるというのに。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!