熱帯魚の憂鬱

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さっき   彼がガラスの窓をぶち破った。大きな窓だったので、わたしたちは簡単に外に出られた。 外に出て一番最初に思ったことは、空気が顔をなでていくことが心地よいということだった。わたしは頬に手を当てて、そしてそこに水があることに気がついた。 「目から水が出てる」 「嘆いてるんだよ、この世界に生まれてしまったことを」 彼を見た。彼も泣いていた。 「ぼくたちはこの瞬間に生まれたんだね」
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