熱帯魚の憂鬱

6/7
前へ
/54ページ
次へ
今   彼の手が温かいことは知っていた。でもそれに、意味を求めたのは初めてだった。 「あぁ、なにもかも、なにもかもすべてきみのせいだよ」 彼が優しく笑った。初めて笑うというものを見た。 「ぼくがきみを愛してしまったことも、ぼくたちがこの世界に生まれてしまったことも、なにもかもすべてきみのせいだよ」 彼は笑いながら目を閉じた。幸せそうに。 「ぼくはきみを」   わたしたちはこの世界では生きられない。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加