オオカミと私と

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パコは、上目遣いでアリスを見つめた。そして、小さくため息をついた。 「・・・君とは正反対なんだけど・・・僕は運命を信じてる。これは、その運命を忘れない為に持ってる。」 「・・・?」 「いつなのか、どこだったのか忘れてしまったけど、この持ち主はとても・・・綺麗で・・・これを持っていればきっとその人に会える気がする。必ず会えるんだよ!!」 「ふぅん・・・」 アリスは興味なさそうにそれを見た。パコは断固としてそれを見せてくれないようだ。 「ところで、屋上から落ちた話を詳しく聞きたいんだけど」 「ええ。あのとき、私は屋上に行く途中にある階段の踊り場でさぼってたのよ。そしたら、誰かが来たから急いで屋上に上がったの。でね、隠れようと思って屋上の策を乗り越えたら、手が滑ってキャアって叫んだわ。気付けばお母さんの泣き顔があったってわけ。そういえば、誰かが私の名前を叫んでいたわ。それと・・・何かを忘れた気が・・・」 ガサガサッ 「!!」 オオカミは何かに気付いた。 「何かいるぜ・・・」 「え?」 確かに、深緑色の茂みが軽くざわついていた。 「あれは風のせいよ。おどろかさないで。」 「風なんて少しも吹いてないだろう?」 「そういえばそうね・・・それなら、蛇とか蛙とか、あっ、リスだったりしてー❤ちょっと見てみるわ!!」 アリスは茂みに駆け寄ると、中へ入っていった。 「見てー!!」 「えっ!?」 アリスの手には、蛇が巻き付いていた。 「素敵よね・・・この細い体、長い舌、ほらっパコも触ってみなさいよ」 「いやいや無理だから。そんなもんよく触るね。絶対無理だから。ありえないからーー!!」 ガサガサッ 「ん?まだ何かいるわ・・・」 アリスはまたもや茂みに入っていった。そんな後ろ姿を見て、たくましいな・・・とパコはいつも思う。 「ギャアーー!!」 女とは思えない、耳をつんざくアリスの叫び声がした。何だろうか。蛇は大丈夫だが、ウサギや鹿は無理だとか言い出すんじゃないか。 「やれやれ」 オオカミは重い腰を持ち上げ、茂みに入っていった。 ・・・ 「ウギャー!!!」 次はオオカミの叫び声が聞こえた。しばらくして、二人は必死に走って出てきた。
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