ヘンゼルとグレーテル

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ヘンゼルとグレーテル

ヘンゼルは男の子として、グレーテルは女の子としてこの世に生まれ落ちた。 ヘンゼルは優しく、妹思いの兄だった。グレーテルはヘンゼルの妹とは思えない程の美少女だった。二人は仲が良く、いつでも一緒であった。 グレーテルの美しさは、噂となって人に流され風に流され、ついには異国の王の耳に入った。 王は狂気に満ちていた。 美しい王妃を 「裏切られるのではないか」 と心配し殺した。 王妃によく似た王子を 「いずれ私を憎み、反乱し、殺すのではないか」 と心配し殺した。 王妃によく似た姫を 「いつか私のもとを去っていくのではないか」 と心配し殺した。 そうして殺した愛するものの残骸は、剥製にして飾るのだ。二度と自分から離れられないようにするため。 もう一つ、王には性癖があった。美しく可愛い顔をした小さな男の子が大好きだということ。 たくさんの国から売られてきた彼らは、王のおもちゃになり、しまいには殺されてしまう。そうして剥製にされてそれもまた王のおもちゃとなる。 噂は人に触れられるたびに、形を微妙に変えていった。 グレーテルは女の子だが、男の子だという噂になってしまっていたのだ。 それを聞いた王はもう大変。それほどまで美しい可愛い美少年となれば、いても立ってもいられない。すぐに自分のものにしたくなった。 「探してまいれ!!金はいくら積んでも構わぬ!!もしよこさなければ、親、兄弟、すべて殺せ!!少年を決して殺すな!!」 家来も、打ち首になりたくないので必死に探した。
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