ヘンゼルとグレーテル

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コンコン。 ドアを誰かがノックする音。 彼らの母親はドアを開けた。 そこには、たいそう美しい甲冑をつけた兵士が二人。 「まぁまぁ、こんな森の奥深くにある古汚い小屋になんでこざいましょうか。」 「ここにはグレーテルというとても美しい子供がいると聞いたのだが。」 「はぁ…我が子ですが…」 「私は〇〇国の王に仕える兵士だ。実は、国王がその美しい子供の事をたいそう気に入られたのだ。」 「え!?」 「金はいくら積んでもよい。どうか譲ってはくれないか。」 「い、いえ、グレーテルが可哀相ですわ」 兵士は辺りを見回した。 「…家をみるかぎり、とてつもなく貧しい暮らしをしているのだろう?グレーテルを渡してくれれば、決して何も困らないような暮らしをグレーテルに与えよう。ここで貧しく暮らすよりも、国王のそばで裕福な暮らしをするほうがどれだけ幸せか。分かるだろう?」 兵士には説得力があった。今までこの甘い言葉で何人騙してきたことか。裕福な暮らしはひと時、行けば王に性を食い尽くされ、殺される事など少しも知らぬのだから。 「…グレーテルの事を考えれば、それがいいのかもしれない。…グレーテルを呼んできましょう。」 兵士は安心してためいきを一つついた。
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